なかったて眺

どうやら今朝、学校へ行く前に俺が見たのはこいつらしかった。
すっぽんぽんだったんで、てっきり人形だと思ったんだけど、夕べ遅くまで新作のイメージのモデルをしていたらしい。
朝日が細く差す作業場の椅子の上で眠りこけてたときには、薔薇色の肌しか見なかったけど、こうして眺めてみても、こいつには身体中、金色の産毛しか生えてないんじゃないかと思う。
どう見ても、17歳の男子には見えないなんて、これもある意味、気の毒だよな。
昨夜は、義経の子供の頃の人形が欲しいと注文を貰って、大張り切りの母ちゃんは着せ替えよろしく、自分の着物を着せて写真を撮りイメージソースを作っていたらしい。
遮那王???牛若丸だっけ?
その昔、川俣喜八郎という人の平家物語の人形に、どっぷりと魅せられていた母ちゃんは、和ものの注文にすっかり舞い上がっていた。
「だって、あんたがモデルじゃ、弁慶にしかならないでしょ?」
そりゃま、俺が薄物羽織ってひらひらと跳ぶのは想像しにくいと思うけど???弁慶かよ。
ガキの頃は、散々モデルやらされたけどね。
「俺のガタイの良いのは、父ちゃんに似たからな。」
直ぐそこに、俺が父ちゃんの肩に乗った写真がある。
強くて優しい父ちゃんは、俺の永遠の憧れだった。
強い男になりたかった。
白い布を掛けられて、そこに横たわるよそよそしい遺体の前で母ちゃんは崩れ泣いていた。
その場で俺は、父ちゃんに誓った。
早くに亡くなってしまった父ちゃんの代わりに、母ちゃんを守れるように俺は強くなる。
見ててくれ、父ちゃん。
俺、父ちゃんみたいな、男の中の男になって母ちゃんを守るから。
いつか、好きなやつができたんなら、大切な母ちゃんを託してもいいと思っていたけど、こんな浮世離れした男の出来損ないに俺は母ちゃんを預けるのか????と想像して、いやいや、それはないと首を振った。
父ちゃんの写真は、変わらず笑っていたけど俺は息子として、こんなやつに母ちゃんを渡すわけにはいかなかった。
どうやら今朝、学校へ行く前に俺が見たのはこいつらしかった。
すっぽんぽんだったんで、てっきり人形だと思ったんだけど、夕べ遅くまで新作のイメージのモデルをしていたらしい。
朝日が細く差す作業場の椅子の上で眠りこけてたときには、薔薇色の肌しか見けど、こうしめてみても、こいつには身体中、金色の産毛しか生えてないんじゃないかと思う。
どう見ても、17歳の男子には見えないなんて、これもある意味、気の毒だよな。
昨夜は、義経の子供の頃の人形が欲しいと注文を貰って、大張り切りの母ちゃんは着せ替えよろしく、自分の着物を着せて写真を撮りイメージソースを作っていたらしい。
遮那王???牛若丸だっけ?
その昔、川俣喜八郎という人の平家物語の人形に、どっぷりと魅せられていた母ちゃんは、和ものの注文にすっかり舞い上がっていた。
「だって、あんたがモデルじゃ、弁慶にしかならないでしょ?」
そりゃま、俺が薄物羽織ってひらひらと跳ぶのは想像しにくいと思うけど???弁慶かよ。
ガキの頃は、散々モデルやらされたけどね。
「俺のガタイの良いのは、父ちゃんに似たからな。」
直ぐそこに、俺が父ちゃんの肩に乗った写真がある。
強くて優しい父ちゃんは、俺の永遠の憧れだった。
強い男になりたかった。
白い布を掛けられて、そこに横たわるよそよそしい遺体の前で母ちゃんは崩れ泣いていた。
その場で俺は、父ちゃんに誓った。
早くに亡くなってしまった父ちゃんの代わりに、母ちゃんを守れるように俺は強くなる。
見ててくれ、父ちゃん。
俺、父ちゃんみたいな、男の中の男になって母ちゃんを守るから。
いつか、好きなやつができたんなら、大切な母ちゃんを託してもいいと思っていたけど、こんな浮世離れした男の出来損ないに俺は母ちゃんを預けるのか????と想像して、いやいや、それはないと首を振った。
父ちゃんの写真は、変わらず笑っていたけど俺は息子として、こんなやつに母ちゃんを渡すわけにはいかなかった。
「ただいま~。」
おまえの家じゃないだろ。
「ぼくの部屋は???えっと、亜由美さんと一緒の部屋で良いから???あっ。」
俺は、そいつの荷物を掻っ攫うと、居間の片隅に投げつけた。
きっと涙ぐんでいるだろうが、どうでもいい。
「ただいま~。」
おまえの家じゃないだろ。
「ぼくの部屋は???えっと、亜由美さんと一緒の部屋で良いから???あっ。」
俺は、そいつの荷物を掻っ攫うと、居間の片隅に投げつけた。
きっと涙ぐんでいるだろうが、どうでもいい。
  


2017年06月19日 Posted by 身内同然と思 at 12:42Comments(0)